犬の病気・遺伝性疾患・Q&A

Disease of Dogs

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犬の病気・遺伝性疾患・Q&A

病気/遺伝性疾患(1)

病気への知識を深め適切に対応しましょう

純犬種のほとんどは目標とする理想的外貌が得られるように近親交配がなされ作出されてきました。ボストン・テリアもその例外ではなく同様に作出され雑交配から200年余りで今日の姿となったわけです。

異なる犬を交配することにより生まれた子は雑種となりますが、その両親の特徴を様々な形で受け継ぐ事になります。その中で必要とする形質を良好に受け継いだ個体を選別し、つぎにその形質の似たもの同士を交配します。このように選抜と交配を何世代にも渡って繰り返すことにより、新しい系統(犬種)を作る事になり、そのプロセスの中で、近親交配を取り入れることによって、より効率的に目的を達成できるのです。このように人為的操作を繰り返す事によって、その系統の持つ特徴は普遍的なものとなり、純犬種となります。

病気/遺伝性疾患(2)

病気への知識を深め適切に対応しましょう

しかし、一方では問題も生じます。この純犬種の作出のプロセスにおいて望ましい遺伝子の固定化に隠れて、望まぬ遺伝的疾患の素因も固定されてしまうことがあります。いわゆる個体の血統上の弱点ということです。これはボストン・テリア特有の問題ではありませんが、そのような素因を持っている可能性が高いと理解してください。

眼科疾患・外傷

Ophthalmologic disease, trauma

ボストン・テリアの愛らしさの一つである大きな目は、短頭種であることと相まって、外傷を負いやすくなっています。涙が多い、目ヤニが出る、しょぼしょぼさせているなど、痛がっている様子があれば早急に獣医師に相談して下さい。

人の目に比べて犬の目はデリケートで非常に弱く、早急に適切な処置が必要な場合があります。取り返しのつかない状況を引き起こさぬように注意しておきましょう。

また、目は口程にものを言うと言われていますが、これは身体的な面でもあてはまっており、他疾患の発見の重要な部位です。1日1回は、あなたの愛犬の目をチェックしてあげてください。

若年性白内障(1)

Juvenile cataract

80種以上もの犬種に発症しますが、その中にボストン・テリアも含まれています。白内障は、水晶体のタンパク質の変性によって透明性が失われ、部分的あるいは全体が混濁し視力障害を引き起こします。若年性白内障は、新生子期から6歳齢までに発症します。

遺伝性疾患ですが、炎症性、代謝性、栄養性、中毒性、外傷性などの原因も考慮し、また混濁が水晶体ではなく角膜に起こっている場合もあり(この場合は白内障とは言いません)識別診断が必要となります。獣医師に相談して下さい。進行度、視力障害の程度を考慮して対処方法を考えますが、内科的療法で確実な効果を得られる方法はありません。

若年性白内障(2)

Juvenile cataract 2

しかし、吸収が起これば最初の1年に自然な回復をすることもあります。また、重度の視力障害に対し、外科的処置を行うこともあります。

この疾患を持つ犬は繁殖に使うべきではなく、白内障を早期に知ることが重要となります。しかし、遅ければ6歳齢で発症する個体もあるので、可能な限り両親、祖父母、會祖父母にまでさかのぼり、白内障の系統で無いことを確認することが重要です。

皮膚疾患・遺伝性の疾患

Skin disease, hereditary disease

遺伝性の疾患に「パターン脱毛」というのがあり、ダックスフンドにおいてよく知られています。ボストン・テリアにもこの疾患に対する遺伝的素因を持つものがいます。脱毛は1歳までに始まり、年単位でゆっくり進行していきます。雄は耳の先端から開始するのが一般的で、雌は腹部の毛が薄くなり、それが進展していく事が多いようです。残念ながらこの疾患には治療法がありません。

非遺伝性・体質

Non-hereditary, constitution

遺伝ではなく体質と言っていいのかも知れませんが、ボストンには「色素過剰症」を起こしやすい個体がいるようです。これは日差しを浴びる事によって起こる、つまり日焼けの他にアレルギー、マラセチアや細菌などの感染、外部寄生虫の寄生などによる皮膚への慢性的な炎症例や甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症のようなホルモン異常も原因となります。又、皮膚の肥厚を伴うこともあります。治療法は、原因となる疾患の治療を行うことであり、過剰に沈着した色素は、多少の時間はかかりますが、自然と改善されます。

犬ニキビダニ症、犬毛包虫症

Dog demodicosis

アカラス(犬ニキビダニ症、犬毛包虫症)の原因であるニキビダニは、ほとんどの犬に寄生しており、一般的に病変を作らない多い寄生虫と理解されています。しかし、幼犬時の免疫機能の不完全な時期には、目や口の周りなどに局所病変を作ることがあります。1~2か所の小さな病変ならば、多くの場合は自然治癒しますが、中には病変が拡大し、全身に広がることがあります。成犬での発症は非常に稀ですが、高齢犬では時に発症を見ることがあります。内分泌系疾患などの基礎疾患がある場合が多く、難治性であることが予想されます。以前は、難治性のものに効果的な薬剤がなく、治療できないものも多かったのですが最近ではかなり効果的な治療薬剤があります。しかし、それでも時間と手間をかけなければならない疾患であり、根治ではなく維持できる程度でもやむなしといった症例もまだ存在しています。

水頭症

Hydrocephalus of the dog

水頭症とは、頭蓋骨内に脳脊髄液が過剰に貯留することをいい、先天性にも後天性にも起こる疾患です。水頭症は、液体の貯留する部位から、内水頭症と外水頭症に分けられますが、犬の場合、ほとんどの症例は内水頭症で脳室内への液体の過剰貯留による脳実質の障害が起こります。ある研究において、水頭症発病の危険率が他の犬種と比べ、高い犬種は11犬種であることがわかりました。その中には我が国でも人気の高い小型犬種が多く含まれています。ボストン・テリアもその中に含まれています。水頭症の症状は、活動力の低下、痙攣発作、嗜眠、何かに取り付かれた様な目的のない歩行、意識障害などバラエティーに富んでます。

腫瘍(1)

Tumor of the dog

腫瘍は人と同様に高齢になればなるほど、その発症率が高くなります。食事内容や飼育環境が昔に比べて良好となり、さらに獣医学の進歩も加わり、犬も人と同様に長命になりました。それに伴って、腫瘍の発症率も確実に高くなっています。

腫瘍は、身体のどの部位に起こってもおかしくありません。それらのうち注意をしていれば早期発見が可能な体表部の腫瘍の代表は、乳腺腫瘍、肥満脂肪細胞腫となります。乳腺腫瘍を含め、ほとんどの腫瘍はボストン・テリアに限らず他犬種との発症リスクは同様と考えてください。しかし、肥満脂肪細胞腫に関しては、他犬種と比べて、ボストン・テリア、ボクサー、ラブラドールなどに発症リスクが高いことが知られています。

腫瘍(2)

Tumor of the dog 2

乳腺腫瘍は雌犬で発生率1位の腫瘍です。その50%が良性、残りの50%は悪性です。乳腺腫瘍は多発性であることが多く、それぞれが組織学的に異なる腫瘍であることも珍しいことではありません。この腫瘍は、唯一有効な予防方法が存在する腫瘍でもあります。

繁殖を望まない場合、早期の避妊手術(卵巣を残す場合を除く)により、かなり確実な予防効果が得られます。具体的な数字をあげると、乳腺腫瘍発生のリスクは、初回発情の前の避妊手術で0.05%に、初回と2回目発情の間の避妊手術で8%に、それ以降でも26%に下げることができるといわれています。

腫瘍(3)

Tumor of the dog 3

肥満細胞腫は皮膚腫瘍のなかで最も多い腫瘍です。名称に肥満の文字がありますが身体の肥満とはなんら関係はありません。平均発生年齢約9歳ということから考えると、高齢犬の腫瘍と考えられますが、幼犬の発生も報告されており、若い犬での発生も珍しくはありません。

皮膚病変は、ド―ム状を呈し、赤いことが多いのですが、硬さ、形状、色調とも多様性を示します。組織学的には高分化型(どちらかといえば良性)、中間型、未分化型(かなり悪性)というふうに分類されます。ひとつの報告によれば、外科切除7カ月の生存率は高分化型79%、中間型37%、未分化型15%であり、病理検査所見で良性の部類に入る高分化型でさえかなりの死亡率があり、できる限り早期発見、早期治療が必要となります。

さいごに~病気への心構え~

Attitude to the disease

これらの他にも、膝蓋骨脱臼、鼻孔狭窄、軟口蓋過長症、てんかんなどが先天的な要因により発症しますが、すべてがボストン・テリアに起こるわけでもなく、またボストン・テリア特有の疾患でもありません。もちろんとりわけ遺伝性疾患が多いというわけでもありませんが、飼い主の方は病気になることを必要以上に恐れるだけでなく、どのような病気があり?その兆候はどういうものか?必要な知識を持って愛犬とのコミュニケーションのなかから、いち早く見つけだし、適切な対処をとることが重要だと思っています。

老齢期の管理(1)

さいごまで愛情をもって

小型犬であるボストン・テリアは、それほど急激に老いを感じるということがありませんが6歳を迎えたら、年に一度の定期検査を行っていくようにしましょう。高齢期に入ると、人と同じくいわゆるガン年齢にさしかかりますので、愛犬の健康診断を定期的に行っていくことは互いに必要なことです。一昔前に比べれば、獣医学が格段に進歩していますのでガンも早期発見で治癒率は上がっています。愛犬の定期健診をしっかりと計画しておきましょう。

老齢期の管理(2)

さいごまで愛情をもって

そして、特に注意していただきたいのは肥満です。年齢と共に若いときとは違い運動量も減りますので同じだけ食べさせていたのでは、当然カロリーオーバーとなり過剰に太ってしまいます。ボストン・テリアは短頭種ですから鼻腔の構造が長頭種とは異なり、呼吸の効率が悪く、肥満はそれに拍車をかけてしまいます。気管虚脱や、心臓病、呼吸困難や、その他疾患を引き起こす基になりやすくなります。そこで極端な食事制限をするというわけではなく、ライトフードに変えたり、混ぜる肉類を牛肉から馬肉や鶏肉にかえたり、野菜を刻んで湯がいて混ぜるなどなどの工夫をし満足感を感じるような食事から肥満を防止してあげると良いでしょう。

老齢期の管理(3)

さいごまで愛情をもって

また、加齢の度合いは、その子、その子で違います。早くから白髪が出る子もいれば、歯が抜けるのが早い子もいます。いつまでも外見だけは若い子、いつまでも元気に動き回っている運動能力の高い子もいます。ただ見えない部分で老化は進行していることを理解して、その年齢に応じた散歩の仕方や食事など健康状態に注意していかなければならないということを理解しておいてください。

老齢期の管理(4)

さいごまで愛情をもって

私の経験上、ボストン・テリアの本当の意味での老齢期は10歳以降に始まるように感じています。犬の10歳というのは人の60歳ぐらいで、ボストン・テリアはこの頃から、聴覚や平常時の体温がやや低下してくることが多いです。また、成犬時に比べると運動量も少なくなり、散歩等の催促や、自ら進んで走り回るなどの強い運動への意欲が低下してきます。

老齢期の管理(5)

さいごまで愛情をもって

日々一緒に生活をしていると愛犬の年齢というものは割と意識しないものかもしれません。いや、ペットとして、家族の一員として、同じ時間を共有していれば、自分の愛犬が老いていき、いずれは死を迎えるということなどは考えたくもないものです。しかしながら、どんなに愛情をかけようと、どんなに大切にしていようとも、老いは年々やってきます。1分1秒でも、元気で暮らしていけるように切に願いますが、そのときを考えておくことも飼い主として大事なことです。

いずれにせよ、長い年月を一緒に生活してきた飼い主さんであれば、愛犬の老いを口出さなくても感じることでしょう。その時には、老いた愛犬と若いときとは違う遊びやケアをしながら生活を楽しんでいただきたい。そう思います。

Q&A(1)

ボストン・テリアには、病気が多いって本当ですか?

Q:ボストン・テリアには、病気が多いって本当ですか?

A:そんなことはありません。通常、純犬種であれば必ずといっていいほど、どの犬種においても血統書上の弱点を持ちます。いわゆる先天性疾患と呼ばれる病気ですが、ちゃんと自分の所有する台メス、種オスの弱点を認識してブリーディングしているブリーダーは、次の代にその弱点を引き継がないように考えた組み合わせで交配を考えます。そして、改良に改良を重ねて、より良い個体の作出に努めます。ですから、飼われる方も、その犬舎を訪ね、出来れば両親犬、もしくは片親犬を見て購入されるべきです。何故なら、親犬を見れば白内障の有無や、健全性が解ると思います。

Q&A(2)

ボストン・テリアって、やんちゃって本当ですか?

Q:ボストン・テリアって、やんちゃって本当ですか?

A:健康なボストンの子犬は好奇心に溢れ、やんちゃです。しかし、愛情深く頭のいいボストンの子犬は、アメリカナショナルクラブのスタンダードにも「飼い主が正しい飼い方をすれば、彼らは生涯最良の伴侶となるだろう。」と明記されている様に、素晴らしい家族の一員となるでしょう。その為にも、性格、健全性、クオリティーを吟味して購入するべきでしょう。

Q&A(3)

ミニボストンがいるって本当ですか?

Q:ミニボストンがいるって本当ですか?

A:答えはノーです。ボストンは原産国アメリカにおいても、どの国においてもトイグループには属しません。確かにスタンダードには、上限の体重は11kgと明記されていて、下限は明記されていませんが、ボストンはトイドッグではなく、ノンスポーティングドッグです。どの犬種においても、近親繁殖をしていけば、まず、外形奇形より、内奇形を持つ個体が出てきます。それはいわゆる不健全な個体ということです。健康な要素が生まれつき欠如した固体です。ボストンの健康な子犬は60日前後で1kgは超えます。成犬で2~3kgのボストンは乱繁殖の産物といえます。

Q&A(4)

いい子犬ってどう見分ければ良いですか?

Q:いい子犬ってどう見分ければ良いですか?

A:健康なボストンの子犬は、抱いた時に見かけよりズシッリ重いものです。適度に骨量があり、目はきらきら好奇心に富み、最初は少し緊張していてもすぐに愛想を振りまき、遊び始めます。60日頃で1.3kgは越えている堅太りの子犬を選ぶべきです。